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1人旅〜再びお城へ

枠外はセーブポイント名及び実際にゲーム中でキャラが語る言葉です(2周目)
イコはカゴからカゴに順々に飛び移って崖下の岩場にたどりつこうとしました。
でも、それが思いのほか難しくて。
少しでもジャンプの距離が短かったり、方向が違っていたりすると、あっという間にイコは海に吸い込まれていってしまうのでした。
そして気が付くとまた最初のカゴの上。
命がいくつあっても足りないというのはまさにこの状況(ちょっと違いますね)
もうこの状況が永遠に続くかと思われたのですが、何とかイコは崖下にたどり着きました。
道なりに奥へと進みます。
水門が閉ざされており、このままでは中に入ることができないようです。
イコはつきあたりにあるレバーを試しに引いてみました。
残念。イコの思惑ははずれ、水門が開くかわりに水門の向こう側で鎖が上から降りてきました。
どうやら他の仕掛けを探さないといけないようです。
イコはかたわらにあった箱を海に落とすと、自分も海に飛び込みました。
対岸には途中までしかないハシゴがかかっています。
箱は上手い具合にぷかぷか浮かんでいたので、イコは箱をハシゴの下へ持っていき、おっかなびっくり箱の上に乗ってみました。
さいわいなことに箱はイコを乗せたままひっくり返ることもなく。
上手くハシゴをつかんだイコはそのまま上に登りました。
上にはまたレバーがあって。
今度こそ、と思いつつイコがレバーを引くと、思ったとおり水門が開きました。
イコはふたたび海に飛び降り水門から中へ入ろうとしました。
そのとき、今、自分が足場にした箱が目に留まりました。
この箱はまだ使えるかもしれない、とイコはなんとなく思い、箱を引っ張りながら水門の中へと泳いでいきました。
水門の中には先程降りてきた鎖がぶらさがっていました。
そのまま手を伸ばしただけでは届かないようです。
ジャンプしようにも海の中。蹴るための地面がありません。
でも大丈夫。イコは引っ張ってきた箱をクサリの真下になるように浮かべ、箱の上から鎖に向かってジャンプしました。
上手く鎖にぶら下がったイコはそのまま上へと登っていきました。
上では様々な歯車が回っている光景が広がっていました。
どこかで見たことがある、とイコはつぶやきました。
そうです。イコがヨルダと一緒に滝の裏側に出て、洞窟の道を先に進んでいたとき。
下の方に歯車がたくさんあるのを目にしていたのです。
ここは、その下にあった場所なのだ、とイコは思い当たりました。
上へ上へと進んでいけば、あんがいすんなりと、またお城の中へ入れるかもしれません。
イコは進む道を確かめるように、きょろきょろとあちこちを見回しました。
どちらの方向へ行けばいいかはなんとなくわかったようです。
なのですが。
先に進むのがとても大変で。
まず、歯車のついた台車を押して大きな歯車と接続させ、大きな歯車を回転させます。
次にいったん海に飛び込んで大きな歯車の反対側に上がり、回ってくる棒をつかみ上へあがっていきます。
上についたらパイプをつたい、太いパイプを渡ってまたパイプをつたい。
てっぺんまでたどりついたら鎖に向かってジャンプ。
鎖を揺らして反動をつけ、次の鎖にジャンプ。そこから対岸の足場に飛び移ります。
また歯車についている棒につかまって上へ。
その後回っている歯車3つを落ちないように駆け抜けてゴール。
何回海に落ちたことでしょう。
水面はすぐ下にあるので、落ちても死ぬことはありませんが、落ちるたびにイコはふりだしの場所に戻ってしまうのです。
やっとのことで岩場にたどりつけたときは、もう力を使い果たしてしまったかと思いました。
でも、まだお城の中までは距離がありそうです。
イコは息をととのえて、また先へと進んでいきました。
道なりに進み、ふと見上げると見たことのある橋が頭上にかかっていました。
あれは。あれはヨルダと会って最初に渡った橋だ。
イコはしばし足をとめ、じっと橋を見上げました。
その橋の真下にいるということは、お城の内部にもうすぐ入れそうです。
イコはぶるっと身震いして、再び走り始めました。
早くヨルダに会わなくては。
道はいつしか建物の中に通じていて、雨の音も聞こえなくなりました。
行き止まりの部屋は高い吹き抜けになっていて、中央に大きな塔のようなものが立っていました。
ところどころに橋やハシゴがありましたが、どれも一部が崩れたりしています。
イコは通れそうなところを慎重に選びながら、外周と中央の塔を行き来して下に降りていくことになりました。
まずクサリにぶら下がって反動をつけ、中央の塔の足場に飛び移ります。
そこには崩れていない橋がかかっているので、それを渡りふたたび外周へ。
金属製の橋に付いている鎖付きの台車を外側に押します。
台車に付いていた鎖から外周の下段の足場に飛び移ります。
途中で途切れているハシゴを下り、背面ジャンプで中央の塔へ。
塔の下に飛び降りると、外への出口があります。
ここまでたどり着くのが大変でした。
ここに限ったことではないのですが、どうも自分が行きたいと思っている方向にジャンプできないことがあるみたいで。
こちらの方向だ、と思って方向キーを押してみても、違う方向へイコが飛び出してしまうことがあるのです。
いったいどっちへ行くつもりにすると正しい方向へ行けるのか、外の人はしばし悩みましたです。
さて。
出口から外へ出ると、イコは懐かしい風景を見ることになります。
建物の外、それはイコが小舟で連れてこられて初めてついた船着き場でした。
小舟が岸に乗り上げたかっこうで放置されています。
これは自分が乗ってきた小舟だろうか、とイコは考えました。
それなら自分を連れてきた人たちがまだその辺りにいるはずです。
でも、いくら耳を澄ませても、人の気配は全然感じられませんでした。
もともと前から打ち捨てられてある小舟なのかもしれません。
いくら考えてもわからないので、イコは小舟のことを考えるのをやめました。
そんなことより、ここが連れてこられた船着き場なら、ここからお城の中に入れるということです。
イコはお城への入り口を探しました。
思った通り石像の扉があります。
この扉を開ければ中に入れるはずです。でも、ヨルダがいなければ、イコはこの扉をあけることができません。
大丈夫、とイコは自分に言い聞かせました。彼はお城に連れて来られたときのことを覚えていたのです。
あのとき、ツノのある人が確か。
イコは扉の反対側にある祭壇のようなところに駆け上がりました。
あった。
そこには光り輝く剣がまつられていました。
イコは恐る恐る剣を手に取ると、キラキラ輝く刃をまぶしそうに見つめました。
そして石像の扉の前に戻り、剣をかざすと。
ヨルダが扉の前に立ったのと同じように剣と扉が反応して光がほとばしり。
石像の扉はゆっくりと開きました。
イコはその中へゆっくりと入りました。
そういえば、とイコは思いました。
最初に来たとき、この剣には鞘があったはずだ。
ツノのある人が鞘から剣を抜くのを見たもの。
鞘はいったいどこへ行ってしまったんだろう。
いくら考えてもイコにはわかりませんでした。
務めを果たして帰るとき、鞘に入れ忘れたまま剣を置いていってしまったのでしょうか。
扉から入り、レバーを引いて作動したエレベータで上に向かいながら、イコはそんなことを考えていました。
エレベータが付いた場所は、カプセルが並んだ部屋でした。
イコもその中の1つに入れられたのです。
カプセルから出ることができなかったら、いったい今頃どうなっていたのでしょう。
部屋の中は、イコが最初に連れて来られたときとは雰囲気が変わっていました。
子供のような姿をした影たちがわらわらと祭壇に集まっています。
祭壇の中央には、なんと、ヨルダがいました。
でも、どうしたというのでしょう。
ヨルダは石のように固まってぴくりとも動かないのです。
イコがどんなに呼びかけてみてもムダでした。
影たちは石と化したヨルダの周囲にわらわらと集まっているのでした。
急に怒りがこみ上げてきて、イコは影に斬りかかりました。
感情にまかせて影を何体か倒したとき、イコはあることに気が付いたのです。
影が1つ消えると、カプセルが1つ光るのです。
まるで影とカプセルが対応しているようです。
いえ、影と対応しているのはカプセルではありません。カプセルの中の子供。
いったいどういうわけなのかわかりませんが、このたくさんの影たちは、カプセルに入れられたツノのある子供のなれの果てなのです。
イコはだんだん影を倒すのが苦しくなってきました。
だって、自分もあのカプセルに入れられる運命だったのです。
ほんの偶然で外に出られなければイコも影となりお城をさまようこととなっていたはずなのです。
それに。
今まであんなに強敵だったと思っていた影が、なんて無力に見えるのでしょう。
そうです。影は強そうでいて実は無力な存在でした。
ヨルダが影の穴に引きずり込まれると世界がそこで途切れてしまうので恐ろしかっただけで、影はイコに対して何かができたわけではありませんでした。
せいぜいその場に倒すことができるだけ。
命を奪うことも、ケガをさせることだって影にはできなかったのです。
イコは泣きたいような気分になってきました。
それでも影を倒し続けたのです。
そうしなければヨルダを救うことができない、そう感じていたので。
影たちをすべて倒し、カプセル全てが光ったとき
(正確に言うと、1つだけ光らないカプセルがありました。イコが入っていたカプセルです)
ヨルダの背後に階段が下りてきました。
イコはゆっくりと上へのぼって行きました。