イコは光の中で目を覚ましました。
あたりをみまわすと、自分が小舟に乗っていて、どこまでも続く白い砂浜に打ち上げられていたことがわかりました。
雨はすでにやみ、太陽の光が満ちあふれ、穏やかな波が打ち寄せています。
イコは小舟から降りてとぼとぼと歩き出しました。
なぜ、自分がここにいるのかよくわかりません。
お城にイケニエとして出されたことは憶えているのですが、その後のことがはっきりと思い出せないのです。
イコはよくわからないまま、とぼとぼと砂浜を歩き続けました。
砂浜の奥には崖があって向こう側には簡単に行けないようです。
ここはどこなんだろう。村の方にはこの崖をこえて行けばいいんだろうか。
イコはそんなことをぼんやりと考えながら崖に近づきました。
すると、崖の下あたりに何かが生えているのに気づきました。
それは。
スイカでした。
夏の光をいっぱい浴びて、大きなスイカがいっぱい実っています。
イコはその中のひとつを持ち上げてみました。
そうとう重いです。中身もぎっしりつまっているのでしょう。
スイカを持ち上げたまま数歩歩いたところで、イコはふらつき、スイカを落としてしまいました。
スイカはパーンとはじけ、真っ赤な実があたりに飛び散りました。
それを見たイコはたまらなくお腹が空いてきました。
そういえば、お城にいる間、一度も何も飲んだり食べたりしていないのです。
イコはまたスイカをひとつ持ち上げました。
そしてそのまま波打ち際の方へ歩き出しました。
ここでスイカを割ってしまうと砂だらけになってしまう。
波打ち際で割れば水できれいになるし、塩味もついておいしいだろうと思ったのです。
そんな風に波打ち際に来ると。
イコは誰かが横たわっているのに気が付きました。
ヨルダだ。
イコは記憶がはっきりしてくるのをおぼえました。
ヨルダ、君も一緒にここへ流されてきたんだね。
イコがスイカを持ったまま見守っているうちに、ヨルダは目を覚ましました。
イコはほっとして、またお腹が空いていることを思い出しました。
がつがつとスイカを頬張るイコ。
そんなイコをヨルダはかたわらで静かに見ているのでした。